メイン | 2006年05月 »

2006年04月29日

「游(ゆう)」〜生命(いのち)があそぶ〜

心友クリニックには、「セラピールーム游」を併設してます。「游(ゆう)」という字は、ふだんあまり見かけませんよね。

「游」のもともとの字は、神霊(スピリット)が宿る吹き流しをつけた旗を持ちゆく人の形で、神霊(スピリット)があそぶこと、気ままに行動することという意味があるのです。

それから、「およぐ」の意味がある「游」と「行く」の意味がある「遊」がつくられたといわれています。

スピリットの世界でもある心の深い部分(無意識)と意識の狭間、あるいは心と身体がオーバーラップした領域、さらに「わたし」と「あなた」で共有するこの空間。
そういうインターラクティヴな領域で、自然(じねん)を体感していただきたいという願いをこめて、道(途)を行く「遊」ではなく、生命(いのち)の源でもある汀(みぎわ)で泳ぎあそぶ「游」の字を選びました。

「あなた」の本質であるスピリットが、偏らずにニュートラルに。
そして「いま・ここ(be here, now)」でナチュラルで自由に。
それが「セラピールーム游」の名前の意味なのです。

「セラピールーム游」のウェブサイトは近日公開予定です。
どんなことをやってるのか、どんなサイトになるのか、お楽しみに彡☆

2006年04月27日

うつは心の風邪?

春になると「木の芽時は何となくだるい。やる気が起きない」という声をよく聞きます。冬は体温を上げ皮下脂肪を増やして寒気から身を守り、暖かくなるとこの仕組みは一気に解消します。ところが春先は、体内環境の調節が気温の変化にうまく対応できず、体調をくずしやすくなるのです。

このような身体と対外環境のミスマッチの時期、五月のゴールデンウィーク明けは、ゆっくり休んだはずなのにかえって疲労感が残ります。いわゆる「五月病」です。期待に胸を膨らませた入学や入社で新しい環境に慣れる、理想と現実のギャップというストレスが、身体と対外環境のミスマッチと重なり、無気力、引き籠もり、無断欠勤という虚脱状態に陥るのです。このようなとき、無理に気分転換をしようとしたり、頑張らなければと焦れば焦るほど、気持ちが空回りするだけで、どんどん泥沼にはまりこんでしまいます。それがいわゆるうつ状態です。

実は、わたしもこのようなうつ状態を体験したのです。その頃、内科医とホスピス医を兼任していた私は、自分自身でもストレスと疲労が溜まっていることを自覚していましたので、安定剤や抗鬱剤を自分で処方して飲んだりしていました。そんな中、季節はずれの風邪をきっかけに、まったく身体が動かなくなってしまったのです。ものすごい不安に襲われました。急に自分がダメな人間になってしまったように思えて、このまま狂気に蝕まれながら生きていくくらいなら、自分の手で終わらせてしまおう・・・そこまで思い詰めたこともありました。自分一人ではどうにもならないことに観念して、思い切って精神科のクリニックを受診したのです。同じ医療者としてのプライドの傷つきや羞恥、精神科という敷居の高さを感じましたが、藁にもすがる思いでした。

初めての受診の時、待合室でうつ病のスケール、ストレス度チェック、ライフイベントスケールを記入し、その結果を見たドクターは半分あきれ顔、半分驚いたような表情でためいき混じりに、「こんなに高い点数は初めてだ。こんな状態で、よくここまでやってこれたね。」とポツリ。思わず涙がこぼれてしまいました。そのときやっと自分がいかに自分に無理をして生きていたのか、初めて自覚したのです。抗鬱剤と2種類の安定剤、睡眠導入剤を処方されました。でも薬を飲むと体はダルくなるし、眠くなるし、とても仕事どころではありません。なんとか平静を装って外来や病棟での仕事をこなす合間で、医局のソファーで横になっているという時期が1ヶ月くらい続きました。でも気持ちは、少しずつ落ち着きを取り戻しつつありました。

内服治療を開始して1ヶ月がすぎた頃、カウンセリングを受けることになりました。カウンセラーとの対話を通して自分自身のものの感じ方を知ることで、少しずつ自分自身の気持ちに目が向くようになったようです。今まで自分と考えていた自分は、本当の自分のほんの一部であり、感覚や感情を押さえていたことに気がついたのです。2週間に一度のカウンセリングとドクターの診察を受けながら、自分でも心理学の勉強を始めました。心理のセミナーに参加し、別の心理セラピストから違うスタイルの心理療法を受けることで、一気に自分の中の世界が広がりました。少しずつ自分を取り戻しながら、自分を見つめ自分の心の中に潛ってみるという経験をくりかえしているうちに、通院開始から半年が過ぎ、薬も少しずつ減っていき、1年後には通院もカウンセリングも終結したのです。環境にも大きな変化がありました。仕事も内科から精神科の病院に移り、これまでの内科の知識と経験を活かしつつ精神的なこともカバー出来るという心身医学を柱にするようになったのです。

こういうわたし自身のうつの体験から、うつは心の風邪でもあると同時に、大きな変容のチャンスでもあると思っています。そういう意味では、うつはサナギの状態だとも言えると思います。幼虫からサナギになるということは、一端外の世界と隔絶しゆっくりとした心の内部の変容を育む時期だと考えられます。うつというトンネルを抜けると言うことは、サナギから羽化し幼虫の時とは全く違った世界が開けるということですし、二度と幼虫に戻らないと言うことでもあるのです。当クリニックを受診される方にとって、その方の心のツアー・ガイドになれたら、と願っています。