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2006年05月22日 / 月曜日 / AM11:06
日本医科大学名誉教授の荒木勤先生が日本医師会誌に、『こうありたい21世紀の女性のヘルスケア』というタイトルでこういうことを書いていらっしゃいました。『女性のヘルスケアを考えるうえでの背景には、女性の加齢とそれに伴う卵巣機能、性機能の変化を無視することはできない。
小児・思春期から性成熟期、更年期さらには老年期にわたるヘルスケアは、内分泌環境の変化のみに集中するのではなく、精神的・心理的な心の病も診ることが必要である。女性のヘルスケアは機能的、器質的ないわゆる身体疾患のみにとらわれず、身体と心のトータルケアから診る必要がある。
中略
いずれにしても、20世紀の技術を使っての、薬物による治療だけでは、女性のヘルスケアは成り立たない。21世紀の女性の健康管理には心のケアが大切であり、最も重要である。』
女性の場合、月経と心の問題の間に密接な関係があることはよく知られていますよね。今から約100年くらい前にすでに、月経前には焦燥感、抑うつ気分といった精神症状のみならず、過食や万引きといった逸脱行動や、片頭痛・過眠などの身体症状が20〜30%の女性で観察されることが知られていました。このような状態はPMS(月経前症候群)やPMDD(月経前不快気分障害)として広く知られるようになってきました。月経前になると20〜40%の女性がPMSの症状を経験し、そのうち2〜10%が仕事や人間関係において支障をきたしていると報告されており、日常生活や社会生活で大きな障害になっていることもあります。
PMSやPMDDでは、不安・抑うつ、緊張、睡眠の異常、焦燥感、情緒不安定、集中力・判断力の低下などのうつ病と似た精神症状が認められ、さらにPMDDは中枢におけるセロトニン系のニューロトランスミッターの低値が認められることが多く、PMSの精神症状版とみなされているため、抗うつ薬や抗不安薬を処方されることが多いようです。それで症状が楽になるなら、それでいいのでしょう。しかし月経という元々生体に備わった仕組みに伴うPMSやPMDDという症状は、はたして病気(疾患)なのでしょうか?PMSやPMDDが疾患であるなら、その疾患の原因となる月経も生体にとっては有害なものなのでしょうか?
「21世紀の医療は科学、技術を超えた心のケア(humanized care)が重要視される。」という、身体だけでなく心に対する荒木先生の暖かいまなざしに、すごく感銘を受けつつも、でもやっぱり病気と健康、あるいは疾病と正常という対立や、不健康や疾患は悪いものであり、なんとしても治さなくてはならないという強迫的な感じを感じてしまうのです。
身体と心のクロストークには、漢方の考え方がすごくマッチします。漢方では、病気は「気」「血」「水」というエネルギーのバランスの変位ととらえます。症状が強いからバランスの乱れが強い、あるいは疾患が重いということではありません。すごく乱暴な言い方ですが、こういうバランスの乱れを感じるのがPMSのような症状であり、それが物質レベルに顕在化したのが内膜症や子宮筋腫のような器質的な疾患であると漢方ではみるのです。
漢方では器質的な疾患や診断をベースに診るのではなく、症状として感じられるエネルギーの状態からアプローチします。また、漢方は症状や疾患を取り除こうとするのではなく、もともと生体に備わったバランスを補正し、回復する手助けをしようとするのです。上記の荒木先生の言い方をまねると、「調和としてのケア(harmonized care)」といえるかもしれませんね。
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