« ゆううつな月曜日の朝〜ブルーマンデー症候群〜 | メイン | 心理面接 »
2006年05月29日 / 月曜日 / PM11:25
「じゃあ、不安になったときのために安定剤でも出しておきましょうか?」
「いいえ、大丈夫です。気のせいかもしれないけど、この前いただいた漢方で気持ちは落ち着きますから。」
「・・・(^^;)」
安定剤とか抗うつ剤を飲むことに抵抗がある若い女性に、漢方を処方していて、その効果に驚かされることが多い。
すごくツラくて苦しいんだけど、薬に頼りたくない、できれば自分の力で治したいとおっしゃる方には、迷わず漢方をお出ししている。
実は診察室のサイドテーブルの中には、私が愛用している花粉症用の小青竜湯とプチうつ用の桂枝加竜骨牡蛎湯がいつも入っているので、漢方が初めて・・という人には、味見をしてもらっている。小青竜湯はちょっとニガイけど、桂枝加竜骨牡蛎湯はほんのり甘苦くて、これなら・・という人が多い。
それにしても、「気のせい」って患者さんから言われると不思議な気分になる。「検査をしてもどこにも異常がありません。気にしすぎです。気のせいです。」と医者から言われ、(このツラさをわかってもらえなかった・・・)と傷つく人は多い。挙げ句の果て「自律神経失調症」という病名をつけられ(宣告され・・といったニュアンスに近い)、症状を訴えることが罪悪のように責められるという話もよく耳にする。
うちのクリニックに来て漢方を処方してもらって人ならわかるのだか、私は2通りの診察をしている。一つは脈を取り(脈診、たんに脈拍を数えているのではない)、お腹を押さえ(腹診、西洋医学の腹部の触診ではない)、両足のツボを押さえて、身体の声を聞いている。もう一つ、説明が難しいが、私があらぬ方向をじっと観ていることがある。これが診察だなんて、フツーの西洋医学では考えられないことだから、患者さんによっては、その方向を振り向かれる方もあるが・・・(苦笑)。これは実は、患者さんのこころの聲を聴いているのだ。
漢方には、気・血・水という考え方がある。血は呼吸によって取り入れられた天空の気(酸素)と食べ物によって取り入れられた水穀の気を全身に運ぶ働きで、ほぼ血液に相当するもの。水は身体の水分。気は「元気」とか「気持ち」の『気』で、気功で取り組む『気』であり生命活動のエネルギーともいうべきもののことである。この『気』が滯ると、「気鬱」という抑うつ感や息が吸えない感じ、頭がぼぉっとする感じとして表れ、『気』のエネルギーが不足すると、いわゆる元気がない感じ、活力の低下として身体のだるさや疲れやすさ、として感じられる。また、気が逆流すると、頭痛や驚きやすさ、焦りやイライラ、のぼせあるいは動悸として感じられる。私がぼぉ〜っと患者さんのすぐ横や頭上の空間を観ているとき、実は、この『気』を観じているのである。
その診察所見から、その方に一番合いそうな漢方を選ぶ。大体は代表的な方剤(漢方薬のこと)を1種類。場合によっては、2種類。そして漢方がその方に合っているかどうかを確かめるために、1〜2週間後にもう一度来ていただく。多くの人は、なぜか、漢方は長く飲み続けないと効果が出ないと思っている。どうしてなのだろう?漢方は証(体質や所見)にピッタリ合っていると、1度飲んだだけで効果が表れる。ただ証は科学的に判定できるものではないので、こまめな調整が必要なのである。
そして2度目に来院していただいたときに、冒頭に書いたような「気のせいかもしれないけど、この前いただいた漢方で気持ちは落ち着きますから。」と言われるのである。まさに『気』のせい!これこそ、漢方が身体の声もこころの声も聞いているということであり、身体と心をつなぐ『気』に作用し、身体にもこころにも効いて、身体もこころも本来の自然治癒力を回復しつつあるということなのだ。
上に書いた「自律神経失調症」は漢方の得意分野。身体の体質だけでなく、こころの体質(?)も変わり、自然治癒力を回復していかれる過程をみていると、「自律神経失調症」とは、「『自立』神経失調症」だったのではないか?と思う今日この頃である。
このエッセイのトラックバックURL:
http://www.shinyu-clinic.com/mt/mt-tb.cgi/27
Copyright © 2005-2006 Minami Aoyama Shinyu Clinic. All Rights Reserved.
フッターです。フッターです。