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2006年06月06日 / 火曜日 / AM10:01
精神安定剤(抗不安薬)や眠剤(睡眠導入薬)を飲むのは、クセになりそうだから飲みたくないとおっしゃる方が多くいらっしゃいます。ところが、関節痛の痛み止めや、血圧を下げる降圧剤などを服用するときには、クセになるという方はいらっしゃいません。ある患者さんが「それは、先生、気持ちが関係することだからですよ。」とおっしゃいました。ココロに作用するクスリは、クセになると感じるのはなぜなのでしょうか?飲んでいる間は効いているけど、薬の作用時間が切れるとクスリを飲む前の状態に戻るという意味では同じではないかな?と私は思うのですが。多くの人は、心と体を分けて考えていらっしゃるからかもしれません。
もう一歩踏み込んで考えると、多くの人は、クスリはココロの症状を抑える一時的な対症療法にしかすぎない、と心の奥で本能的に感じていらっしゃるのでしょう。カラダよりもココロに自然治癒力を感じていて、ココロに作用する対症療法を続けることで、本来の心の自然治癒力が阻害されると、うすうす感じ取っていらっしゃるのではないでしょうか。ということは、心の症状はむしろ、クスリで一時的に楽にして良くなったつもりになるよりも、多少苦しくても、症状と向き合った方が自然治癒力は発揮されると言うことになるのではないでしょうか?たしかに、これまでの私の経験からも、それはすごく当を得たことだと思えるのです。
他でクスリはもらっているけれども、話を聞いてもらえないから・・・と、クリニックに来てくださる方が何人もいらっしゃいます。話を聞いてもらえる、つまり、自分が抱えている問題や症状をもう一度ゆっくり話すこと、つまりそれらに目を向けることが心の治癒力にはすごく大切なことなのです。当クリニックで一人一人とゆっくり話が出来る時間を取っているのはそのためですし、心理相談やカウンセリングで話を聞いてもらうだけで、すごく深い気づきを得て元気になっていかれる方も多くいらっしゃいます。そう考えると、心の問題や症状に対して、クスリという対症療法とともに、問題や症状と向き合う=そのことについて話をする=「語る」ということが大切だということを、多くの人がそれとなく感じているし、心自身がそれを知っているということではないでしょうか。
ということは、対症療法も従来のように、症状を抑えるだけ、症状にふたをするだけのやり方では足りないのでしょう。たとえば、緊張して動悸がする場合、緊張をやわらげ動悸を抑える薬を使うことは、初期には必要なことかもしれません。でもずっとそのままでは、緊張という心の状態と、動悸という身体の状態との間の対話が断たれたままですし、私たちに本来備わっている自然治癒力を損なうようなやり方なのかもしれません。このことが多くの人が感じている「クセになる」ということなのかもしれません。
当クリニックでは、心の症状に対しても漢方を多用しています。月経前症候群(PMS)のように、身体の状態が心に反映され、イライラや気分の落ち込みなどを呈する状態では、普通は安定剤や抗うつ剤が使われます。対症療法ですね。でも月経前にイライラすることは受精卵が子宮に着床する時期、外敵から身を守るという自然の摂理ですし、この症状を抑えるということはちょっと不自然な感じがします。だから体と心を一体とみる漢方にまさる処方はないと思うのです。実際、何人もの人がほんの数日だけ漢方の方剤を服用しただけで、PMSの症状から解放されます。漢方の原材料は生薬、つまりおおざっぱに言うとその辺に生えている植物から抽出した自然のものです。食べるかわりに方剤として服用するのですが、疲れたときに酸っぱいものが欲しくなることと原理は同じでしょう。身体の声、心の聲にあわせて漢方の方剤を処方し、自然の食べ物を摂る感覚で服(食)することにより、症状がやわらぐのはごく自然のことだと思えます。その上で問題に目を向けることで、自然治癒力が十二分に発揮されることは当然のプロセスのように感じます。
クリニックには、いろんな方がさまざまな相談におみえになります。失恋の痛みや傷つき、親や家庭の問題、嫁姑関係、あるいは職場の上司や同僚との問題や、職場内の環境のこと、時には亡くなった人のこと。。。やっぱり漢方を中心として症状をかわしつつ一緒に向き合うことで、無理なく自然にいつの間にか「早く良くなりたい」が「まぁそんなもんか」に変わっていきます。自分の外にある状況が変わったのではなく(変わる場合もありますが)、問題が問題ではなくなるのです。PMSを例に取ると、月経前の気持ちの変動はちゃんとあるのですけど、イライラや気分の落ち込みとして感じなくなるのです。心の体質が変わることでものの見方や感じ方考え方が変わったというか、気づきが生まれたというか、心と体が一つになることで、ごく自然な状態に近づいていくのです。
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