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ストレス対処法〜その4〜気分転換の意味

2006年07月24日 / 月曜日 / AM 9:00

なかなか梅雨が明けずに、まぶしくカラッとした晴天の下で、雨続きのうっとうしい気持ちから解放されたいと思っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。ストレスに対する気分転換と似てますよね。イヤなことがあったり、ストレスを感じたときには、「好きな音楽を聴いたり、趣味やスポーツで気分転換するよう心がけましょう。」なんてことを書いてあるのをよく見かけます。

でもこう暑いと、体はだるいしウダってしまいますね。うっとうしい気分が晴れたとしても、また別のイヤな要素が押し寄せてきてますね。本当に気分転換になってるのでしょうか?

実はこの気分転換というのが実は一番むずかしいのです。
なぜかというとストレスやイヤなことを忘れようとすることは、心理学的に「抑圧」とか「否認」といいますけど、逆効果のことが多いのです。ポジティヴ・シンキングで元気になったつもりでも、イヤなことやストレスを無くなったわけではないし、逆にエネルギーが無意識の方に流れていって、反対のものが出てくることがあるんです。これを「補償」といいます。

一時的にイヤなことから目をそらして蓋をすることによって、忘れることは出来る。けれども、常に蓋の存在が意識されるし、その下にイヤなことがどっかりと存在してることを感じてる。この蓋の向こう側が無意識なんです。この蓋がはずれて中のものが飛び出してきたら、パニックになっちゃうし、押しつぶされてしまうかもしれない。以前「ブルーマンデー症候群」のところで書きましたけど、週末にたっぷり遊んだはずなのに、日曜の夜から気持ちが重くなる。ストレスに暴露される前からストレスを感じている人も多いですよね。

どうしてなのでしょう?よく言われている気分転換は役に立たないのでしょうか?

そうではないのです。だけど何かをしたいという意識エネルギーの「方向性」と「強さ」を「自覚」していないと、元気で活動的であったとしても長続きしないのです。そのうちに意識のエネルギーが蓋の下の無意識の方に自然に流れて行っちゃって、意識にはエネルギーがなくなり、気分の落ち込みとか、ボーッとしてしまうみたいな鬱っぽい状態になってしまうことがある。現実的に何も出来ない状態になる。これが「補償」なんです。無意識からのメッセージなんだけど、現実の中でエネルギーがうまく使われない状態になる。現実に適応できないってことですね。仕事などで燃え尽きて鬱になる時ってこんな感じです。私自身もまさにこの状態の鬱を体験しましたし、そういう患者さんもずいぶん診てきました。

うつ状態になると、エネルギーが無意識の中でグルグルと空回りしているように感じられます。だからよけいに意識は焦るし、焦れば焦るほどエネルギーは消費してしまう。まさに悪循環。でもただエネルギーが空回りしているだけとは限らない。鬱のブログでも書きましたように、無意識の中で何かの変容が起きていることもあるし、無意識の中でエネルギーが使われるといろんなイメージとか象徴(シンボル)が出てくることだってある。これを「サナギの状態」と表現しました。

いままで意識が否定していたこのような状態を、時間をかけて注意深く、そしてやさしく世話してあげる。まさに繭(まゆ)のイメージ。無意識に「隠されている何か」が何を教えてくれるのかを知ること、症状(病い)の意味とは、無意識のイメージを意識の方に呼び戻すことなのです。

そのために必要なこと。それは身体の状態を意識するのと同じように、ふだんはほとんど自覚していない自分の中の微細な感情や感覚に気付くことなんです。こうイメージしてください。私たちがふだんいろんなことを考えたりしている意識は、無意識という大海原に浮かぶちっぽけな島だと。ストレスというのは、島が低気圧に見舞われている状態だと思ってください。横殴りに叩きつける雨と風で、自分という家は吹き飛ばされそうになり、身体である木々は翻弄されている。ストレスという嵐から島を守るためには、まず風や雨で被害が起きるのかどうか見極めるという、前の3回で書いたような「身体」に対する感覚がすごく大切だということがわかると思います。と同時に、大波によって島がダメージを受けないようにする、意識と無意識の間の防波堤が絶対に必要なんです。気分転換という海、あるいは無意識の大波から目をそらす方法では、いつ大波がおしよせて島が水浸しになってしまうかわからないでしょう?嵐だけに限らない。海を見ずに島の崖っぷちを歩いていると、そのうちに崖から落っこちてしまう。島の陸地のことだけをあれこれ心配する神経症的な「考えすぎ」をちょっとやすめて、落ち着いて島の置かれている状況、島と海の関係を見直すことで、島全体のことがわかってくると思います。

ユングの有名な言葉があります。
「神経症が治療されるのではなくて、神経症がわれわれを治療するのである。」

世界がひっくり返るようなインパクトを感じますね。文化庁長官の河合隼雄先生は「病いを深める」という表現をなさっています。結局のところ、私たちが「良い」「悪い」、「好き」「嫌い」と分別していることが、私たちの根源的な問題なのかもしれません。

でも一方で、得体の知れない無意識と直面するだけの自我の力がないときは、しっかりと境界線を守っておく必要があります 。そうしないと凶暴にも思える無意識の力に翻弄されてしまいますから。蓋をしっかり閉じて、無意識を自覚しながら「蓋の上」で人生を謳歌することがさらに蓋を強化してくれるのです。そういう「必要性」のある時にそなえて、日常生活を楽しむいくつかの方法を身につけておく必要があります。

自らの本質と深く関わる無意識のエネルギーと向き合うこと。意識と無意識のエネルギーのバランスをとり、その両方を生きること、これが気分転換の本当の意味なのです。心のありようについては、今後も少しずつ書いていきますね。

次回は夏本番を前に、いわゆる「冷房病」が引き起こす身体への負担について書いてみます。

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